【事例に学ぶ】データで変わる自治体の窓口業務:申請手続き効率化の実践
自治体職員の皆様、日々の業務お疲れ様です。「事例で学ぶ地域DX」編集部です。
窓口業務、特に様々な申請手続きへの対応は、住民サービスの最前線でありながら、多くの自治体で課題を抱えている領域ではないでしょうか。書類の準備、対面での説明、システムへの入力、そして住民の方々の待ち時間。これらの業務には多くの時間と労力がかかり、職員の負担増や住民満足度の低下に繋がることも少なくありません。
これらの課題を解決し、よりスムーズで効率的な窓口サービスを実現するために、データ活用が非常に有効な手段となり得ます。本日は、具体的な事例を交えながら、自治体の窓口業務、特に申請手続きの効率化・改善に繋がるデータ活用の実践方法をご紹介いたします。
窓口業務・申請手続きにおけるデータ活用の可能性
窓口業務におけるデータ活用は、単にデジタル化を進めるだけでなく、業務プロセスそのものを根本から見直し、改善するための強力なツールとなります。具体的には、以下のようなメリットが期待できます。
- 業務処理時間の短縮: 申請にかかる平均時間を分析し、ボトルネックとなっている工程を特定することで、無駄を排除し効率化を図れます。
- ヒューマンエラーの削減: 書類不備が多い申請の種類や、エラーが発生しやすい箇所をデータから把握し、事前のアナウンス強化や手続きフローの見直しに繋げられます。
- 職員の負担軽減: 定型的な問い合わせ内容や、特定の時期に申請が集中する傾向をデータで把握し、人員配置の最適化やFAQの整備を進められます。
- 住民満足度の向上: 待ち時間の短縮、手続きの簡素化、的確な情報提供により、住民の方々の利便性が向上します。
- 行政コストの削減: 業務効率化が進むことで、超過勤務の削減や紙媒体の使用量削減など、間接的なコスト削減にも繋がる可能性があります。
これらのメリットを実現するためには、まず「どのようなデータを収集し、分析するか」を明確にすることが重要です。
【事例に学ぶ】データ分析で申請手続きを改善した自治体
ここで、データ活用によって窓口業務の申請手続きを改善した、ある自治体の事例をご紹介します。
この自治体では、住民票の写しの交付申請や転出・転入手続きといった、日常的に発生する窓口業務において、住民の待ち時間が長いこと、職員の残業が多いことが課題となっていました。
【取り組み】
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現状把握のためのデータ収集:
- 申請件数と種類: 日々の申請件数を種類別に集計。
- 処理時間: 各申請手続きにかかる平均処理時間を職員が簡単な記録を付けることで計測。
- 待ち時間: 窓口の待ち時間計測ツール(簡易な発券機システムなど)や、職員による観察でデータ化。
- 書類不備: 書類に不備があった申請の種類、不備の内容、発生頻度を記録。
- 住民の声: 窓口でのヒアリングやアンケート、問い合わせ内容を分析。
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データの分析:
- 収集したデータをExcelや自治体で利用可能な簡単な集計ツールを用いて分析。
- 申請が特定の日(週明け、月末など)や時間帯に集中している傾向を可視化。
- 特定の申請手続き(例: 複数の証明書を同時に申請する場合)に時間がかかっていることを特定。
- 書類不備は、特定の記載項目でのミスが多いことを発見。
- 住民からは「手続きに必要なものが分かりにくい」「手続きの流れが複雑」といった声が多いことを確認。
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分析結果に基づく改善策の実施:
- 申請が集中する時間帯には、通常よりも多くの職員を窓口に配置するようシフトを調整。
- 時間がかかる手続きについては、事前の予約システム(電話やオンライン)を導入。
- 書類不備が多い記載項目について、申請書の見本を窓口やウェブサイトに分かりやすく掲載。
- 手続きが複雑との声が多かった業務について、手続きの流れを簡潔にまとめたガイドを作成・配布。
- よくある問い合わせ内容をまとめたFAQを整備し、職員の対応効率を向上。
【効果】
これらのデータに基づいた改善策を実施した結果、平均待ち時間が約20%短縮され、職員の超過勤務時間も減少しました。また、書類不備率も低下し、住民からの満足度に関する声も増加しました。
この事例のように、高度な分析ツールを使わなくても、既存のデータを収集・分析し、そこから得られた示唆に基づいて具体的な改善策を実行することで、窓口業務の効率化は十分に可能です。
限られたリソースで始めるデータ活用の第一歩
「データ活用は難しそう」「専門の部署やツールが必要では?」と感じるかもしれません。しかし、限られた予算や人員でも、データ活用を始めることは可能です。
- スモールスタート: まずは一つか二つの特定の申請手続きに絞って、データの収集・分析・改善に取り組んでみましょう。成功体験を積み重ねることが重要です。
- 既存ツールの活用: 新しい高価なツールを導入する必要はありません。多くの自治体で利用されているExcelやGoogle Sheetsでも、基本的な集計やグラフ作成は十分に行えます。もしBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)が導入されていれば、その基本機能を活用するのも良いでしょう(※BIツールとは、組織内の様々なデータを収集・分析し、意思決定を支援するためのツールの総称です)。
- 職員間の連携: 窓口を担当する職員同士で課題を共有し、データ収集の協力を得ることで、現場の実情に即したデータを集めることができます。定期的に情報交換を行う場を設けることも有効です。
- 目的意識の共有: 何のためにデータ活用を行うのか(例: 住民の待ち時間をなくしたい、職員の残業を減らしたい)、具体的な目標を明確にし、関係者間で共有することで、取り組みへのモチベーションを高められます。
データ活用は、最初から完璧を目指す必要はありません。まずはできることから小さく始めて、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回していくことが成功への鍵となります。
まとめ:データ活用で、より「おもてなし」できる窓口へ
データ活用は、自治体の窓口業務を単に効率化するだけでなく、住民の方々にとってより分かりやすく、スムーズな手続きを実現し、ひいては職員の働きがいにも繋がる可能性を秘めています。
日々の窓口業務で蓄積されるデータは、地域のニーズや課題を知るための宝の山です。これらのデータを活用することで、経験や勘だけでなく、客観的な根拠に基づいた改善活動を進めることができます。
専門知識がなくても、高価なツールがなくても、できることから一歩踏み出してみましょう。データ活用の第一歩は、現場の課題を「見える化」し、改善のヒントを得るところから始まります。
この記事が、皆様の地域における窓口業務の改善、そして地域DX推進の一助となれば幸いです。