事例で学ぶ地域DX

【事例に学ぶ】観光客を呼び込む!データに基づいた地域観光戦略のつくり方

Tags: 地域活性化, データ活用, 観光, DX, 戦略

観光振興の課題とデータ活用の可能性

多くの自治体様において、地域活性化の重要な柱として観光振興に取り組まれています。しかし、「どうすればもっと観光客を呼び込めるのだろうか」「施策の効果をどう評価すれば良いのだろうか」といった課題に直面されているケースは少なくありません。これまでは、これまでの経験や勘、あるいは他地域の成功事例の模倣に頼ることも多かったかもしれません。

こうした状況を打破し、より効果的で持続可能な観光戦略を構築するために不可欠なのが「データ活用」です。データに基づいた分析は、観光客のニーズや行動、地域の魅力や課題を客観的に明らかにし、限られた予算や資源を最も効果的な施策に集中させることを可能にします。

本記事では、観光分野におけるデータ活用の具体的なステップと、データに基づいた観光戦略の成功事例をご紹介します。データ活用にこれから取り組みたいとお考えの自治体職員の皆様が、自地域の観光振興においてデータ活用を推進するための一助となれば幸いです。

観光戦略に活用できるデータとは?

観光戦略の立案・実行に活用できるデータは多岐にわたります。主なものをいくつかご紹介します。

これらのデータを単独で使うだけでなく、組み合わせて分析することで、より多角的で深い洞察を得ることが可能です。

データに基づいた観光戦略の具体的なつくり方

データ活用の初心者である自治体職員の皆様でも取り組みやすい、データに基づいた観光戦略の基本的なステップをご紹介します。

  1. 課題・目的の明確化:
    • 「観光客数を〇%増やす」「特定のターゲット層(例:20代女性)の誘致」「滞在時間の延長」「リピーターの増加」など、具体的な目標を設定します。
    • なぜその目標を設定するのか、現状の課題は何なのかを明確にします。例:「隣接市に比べて観光客の滞在時間が短い」「特定の季節に観光客が集中しすぎる」など。
  2. 必要なデータの収集:
    • 設定した課題や目的を達成するために、どのようなデータが必要かを洗い出します。
    • 前述の様々なデータの中から、入手可能で目的に合致するデータを選定し、収集します。公的データ、既存のアンケート結果、Webサイトログなど、まずは今あるデータから活用を検討しましょう。外部のデータ提供サービスやコンサルタントの活用も選択肢となります。
  3. データの分析:
    • 収集したデータを分析ツール(Excel、BIツールなど)や専門家の知見を活用して分析します。
    • 例:「来訪者の〇%が△△県から来ている」「SNSでは□□に関する話題が最も多い」「観光客は駅前のA施設には立ち寄るが、少し離れたB施設までは足を運ばない傾向がある」といった具体的な事実や傾向を抽出します。
  4. 戦略・施策の立案と実行:
    • 分析結果に基づいて、具体的な戦略や施策を立案します。データから得られた客観的な根拠に基づいているため、より効果的な施策を打ち出すことが期待できます。
    • 例:分析で明らかになった主要なターゲット層に合わせた情報発信媒体やコンテンツの選定、観光客の動線分析に基づく周遊ルートの改善や新たなアクセス手段の検討、SNSでの話題を捉えた体験プログラムの開発など。
  5. 効果測定と改善:
    • 実行した施策が目的達成にどれだけ貢献したかを、データを用いて測定します。
    • 例:施策実施前後の観光客数、Webサイトへのアクセス数、SNSでの言及数の変化、特定の施設の利用率などを比較します。
    • 効果測定の結果を踏まえ、施策の改善点を見つけ、次の戦略立案に活かします。データ活用は一度きりではなく、継続的に行うことで戦略の精度を高めることができます。

データ活用による観光戦略の成功事例(仮)

ここでは、データ活用によって観光客誘致や満足度向上に成功した事例(特定の自治体ではなく、一般的なアプローチに基づくイメージ)をご紹介します。

事例1:SNSデータ分析で「隠れた魅力」を発見し、新たな情報発信を強化

ある地域では、これまでの観光プロモーションが有名な観光地やイベントに偏っていることに課題を感じていました。そこで、観光客や地域住民がSNSで発信している情報を収集・分析。その結果、ガイドブックには載っていないような地元のカフェや体験、美しい景観などが頻繁に話題になっていることを発見しました。これらの「隠れた魅力」は、既存の観光情報では十分に伝わっていませんでした。

この分析結果に基づき、自治体はSNSで話題になっていたスポットをまとめた特設WebサイトやSNSアカウントを開設。インフルエンサーとも連携し、データで見つかった隠れた魅力を重点的に発信しました。結果として、若い世代を中心に新たな観光客の呼び込みに成功し、SNSでの地域の話題量も増加しました。

事例2:位置情報データ分析で観光客の「移動パターン」を把握し、周遊ルートを改善

駅や主要観光地は賑わっているものの、少し離れた商店街や文化施設への立ち寄りが少ないことに課題を感じていた地域がありました。そこで、観光シーズンにおける観光客の匿名化された位置情報データを分析。その結果、多くの観光客が駅から主要観光地へ直線的に移動し、その他のエリアにはほとんど立ち寄らないという明確な移動パターンが明らかになりました。また、特定の場所に立ち寄った観光客は滞在時間が長いことも分かりました。

この分析結果を受けて、自治体は主要観光地と商店街・文化施設を結ぶシャトルバスの運行ルートや時刻を見直し、利便性を向上させました。さらに、立ち寄りが少ないエリアにある魅力的なスポットを組み込んだ「テーマ別周遊モデルコース」を複数提案し、駅や観光案内所で積極的に配布しました。これらの施策の結果、商店街や文化施設への観光客の立ち寄りが増加し、地域全体の周遊性が高まりました。

データ活用を始めるための第一歩

データ活用と聞くと、専門的な知識や高額なシステムが必要だと感じられるかもしれません。しかし、まずは身近なデータから小さく始めてみることが重要です。

まとめ

データに基づいた観光戦略は、勘や経験に頼る観光振興から脱却し、限られた資源の中で最大の効果を生み出すための重要な手法です。観光客のニーズや行動、地域の客観的な状況をデータから読み解くことで、よりターゲットに響く、そして効果測定可能な施策を展開することが可能になります。

ご紹介したように、データ活用の第一歩は決して難しくありません。まずは身近なデータに目を向け、小さな目的から分析を始めてみてはいかがでしょうか。成功事例に学びながら、自地域の観光振興におけるデータ活用の可能性をぜひ探求してください。